それは、梅雨がなかなか明けずにジメジメとした日が続いていた夏のことでした。いつものようにリビングの本棚から本を取り出そうとした時、ふと棚板の上に白い粉のようなものが散らっていることに気づきました。「あれ?掃除したばかりなのに、もうホコリが…」そう思ったのですが、何気なく指で触れようとした瞬間、その白い粉が、もぞもぞっと動いたのです。「ひっ!」思わず短い悲鳴を上げてしまいました。よく目を凝らしてみると、それは粉ではなく、体長1ミリにも満たないような、本当に小さな、白い虫の大群だったのです。本棚の隅、本の隙間、壁際…無数の白い点が蠢いている光景は、正直言って鳥肌ものでした。すぐにスマートフォンで「本棚 白い 小さい 虫」と検索。ヒットしたのは「チャタテムシ」という名前でした。湿気とカビを好み、本や紙類も餌にするとのこと。まさに我が家の状況にぴったりです。原因はおそらく、長引く梅雨の湿気と、本棚の裏の壁に発生していたわずかなカビだろうと推測しました。原因が分かったところで、次は駆除です。まずは本棚から全ての本を出し、掃除機で棚板や周辺を徹底的に吸引しました。虫が付いていそうな本は、一冊ずつページをめくりながら確認し、天日干しに(効果があったかは不明ですが、やらないよりはマシかと)。そして、本棚の裏の壁のカビを、カビ取り剤を使って丁寧に除去しました。仕上げに、棚全体をアルコールスプレーで拭き上げ、除湿剤を設置。これで大丈夫だろう、と一息ついたのですが、戦いはまだ終わりませんでした。数日後、またしても棚板の隅に数匹の白い虫を発見。どうやら完全には駆除しきれていなかったようです。それからは、毎日のように本棚をチェックし、見つけ次第ティッシュで捕獲して捨てる、という地道な作業が続きました。換気を徹底し、除湿器もフル稼働させました。幸い、根気強い掃除と除湿が効いたのか、数週間後にはついに白い虫の姿を見ることはなくなりました。しかし、あの時の衝撃と、小さな虫との根気比べの日々は忘れられません。たかが小さな虫と侮るなかれ。彼らの発生は、住環境の危険信号なのかもしれないと、身をもって学んだ出来事でした。