マンションで暮らしていると、上の階や隣の部屋から聞こえてくる生活音は気になるものです。その中でも、深夜に突然聞こえる「ゴォー」という水の流れる音に、驚いた経験はないでしょうか。この音の正体は、多くの場合、他の住人がトイレやお風呂を使った際の排水が、建物の壁の中を通る排水管を流れ落ちる音です。これはマンション特有の構造に起因する現象であり、その仕組みを知ることで、音への理解が深まり、異常のサインにも気づきやすくなります。 マンションの排水管の心臓部とも言えるのが、各階を垂直に貫く「竪管(たてかん)」です。これはマンション全体の共有財産である共用部分にあたり、各住戸の専有部分の配管から流れてきた排水をまとめて下水道へと導く太いパイプです。この竪管は、通常「パイプスペース(PS)」と呼ばれる、壁の内部に設けられた専用の空間に収められています。つまり、私たちの居住空間と排水のメインストリートは、壁一枚で隔てられているに過ぎないのです。そのため、上層階の住人が一度に大量の水を流すと、その水が竪管の壁に当たりながら勢いよく流れ落ちる音が、壁を伝って響いてくるのです。 特に、築年数の古いマンションでは、このパイプスペース内の防音・遮音対策が十分でない場合があり、音が響きやすい傾向にあります。また、間取り図を確認すると「PS」と記された箇所があり、そこが竪管の通り道です。もし、その壁が寝室に面していれば、夜間の排水音が気になりやすいかもしれません。普段聞こえる流水音は、マンションの構造上ある程度は仕方のないものですが、もし「ゴボゴボ」という、空気が逆流するような異音が聞こえ始めたら注意が必要です。それは、配管の内部で詰まりが発生し、排水がスムーズに流れなくなっているサインかもしれません。その音は、自分の部屋の排水トラブルの前兆であると同時に、マンション全体の排水システムの異常を知らせる警告音でもあるのです。壁の向こうの音に耳を澄ますことは、見えない配管の状態を知る一つの手がかりとなります。